日商簿記2級は毎年15万人以上の受験者がいる資格試験であり、多くの企業が求めている資格の一つとして有名です。
簿記2級に合格すると高度な商業簿記と工業簿記の知識を習得することができ、財務諸表を見て経営内容を把握することができるようになります。
また、2017年の試験範囲の改訂により連結会計が加えられ、より実務に近い知識を獲得できるようになりました。
今回は日商簿記2級のおすすめテキスト・問題集をそれぞれの特徴を解説しながらご紹介いたします。
本記事の内容
- 日商簿記2級の概要と独学時の費用
- おすすめテキスト・問題集の特徴
- テキストの選び方
日商簿記2級の概要
試験日 | 統一試験:年3回(2月・6月・11月) ネット試験:随時 |
受験料 | 4,720円(税込) |
試験科目 | 商業簿記・工業簿記 |
試験時間 | 90分 |
合格基準 | 70%以上 |
日商簿記2級の勉強時間はおよそ300〜500時間であり、3ヶ月〜半年程度が一般的でしょう。
経理などで実務経験を積んでいる人は仕事と結びつけながら理解することができるため、もう少し短期間で合格することも可能です。一方、日商簿記3級を飛ばして2級から勉強を開始する人については基礎から学ぶ必要があるためもう少し時間がかかるかもしれません。
日商簿記2級の試験科目は商業簿記と工業簿記があり、多くの出版社が各科目ごとにテキストと問題集を出版しています。
独学で簿記2級を勉強する場合に必要な書籍は全部で5冊(商業簿記テキスト+問題集・工業簿記テキスト+問題集・過去問題集)となります。
5冊揃えるとなると場合によっては1万円超えることもあり、ここまでの金額であれば通信講座や通学講座の費用と変わらなくなってしまいます。
日商簿記2級をこれから勉強したいという人がいる場合は、通信講座や通学講座を視野に入れて検討するようおすすめします。
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おすすめテキスト・問題集
- よくわかる簿記シリーズ 合格テキスト 日商簿記2級
- みんなが欲しかった! 簿記の教科書 日商2級
- スッキリわかる 日商簿記2級
- パブロフ流でみんな合格 日商簿記2級 テキスト&問題集
よくわかる簿記シリーズ 合格テキスト 日商簿記2級
基本情報
- 出版社:TAC出版
- ページ数:商業簿記421ページ・工業簿記356ページ
テキストの特徴
- 王道の簿記検定対策教材
- 網羅的で充実した内容
王道の簿記検定対策教材
本書は大手の資格学校TACが公式教材として採用しているテキストです。
多くの簿記検定・税理士試験・公認会計士試験の合格者を輩出しているTACではこれまで長年に渡って蓄積してきた合格ノウハウをテキスト・問題集に凝縮しています。
まさに簿記検定対策教材の王道とも言えるこのテキストは、昔ながらの二色刷りで記載されており基礎的な知識も丁寧に解説しています。実務でも活かせるようにしっかりと理解を深めながら知識を獲得できるため、「使えない知識」になりません。
簿記検定の勉強をするなら定番のテキストと言える一冊となっています。
網羅的で充実した内容
この書籍は試験範囲を網羅的に学習でき、簿記の周辺知識なども含めた非常に充実した内容になっています。
テキストに記載されている内容は頻出論点や重要度に応じて強弱をつけて解説されており、どの分野・項目に力を入れて勉強すれば良いか一目で分かるようになっています。
別冊で販売されている問題集や本試験問題集では他の書籍よりも多くの問題数を兼ね備えており、他社と一線を画しているといっても過言ではないでしょう。
基礎から応用までしっかり網羅されているため、簿記2級にとどまらずこれから簿記1級や税理士・公認会計士といった上位の資格試験に挑戦したいと考えている人にはピッタリの一冊と言えるでしょう。
みんなが欲しかった! 簿記の教科書 日商2級
基本情報
- 出版社:TAC出版
- ページ数:商業簿記646ページ・工業簿記384ページ
テキストの特徴
- オールカラーで見やすい
- 論点ごとに演習問題を付属
オールカラーで見やすい
この書籍の内容はフルカラーで記載されており、カラーでの図解と板書のようなイラストを掛け合わせた解説で感覚的にイメージを掴むことができます。
簿記3級から勉強してきた人が簿記2級に進むと、最初に「え、こんなに試験範囲広いの!?」と驚くことでしょう。登場する勘定科目も一気に増え、新しい分野も数多く出題されます。筆者も簿記2級の勉強で挫折してしまう人を何人も見てきました。
新しい分野を勉強する際には概要をしっかり捉えて各論に入ることでスムーズに理解することができます。今回おすすめする書籍のなかで唯一フルカラーの本書では、理解のしやすさという点において一番秀でていると言えるでしょう。
論点ごとに演習問題を付属
この書籍では各論点の最後に「基本問題」が収録されており、しっかりアウトプットをしながら学習を進めていくことができます。
簿記2級は試験範囲が広く、テキストで一通りインプットしてから問題集などでアウトプットしようとすると「あれ?これどういう内容だったっけ?」となってしまい、またテキストに戻って確認するということが起こってしまいます。
特に簿記2級は3級よりもスピードが求められ、多くの設問や仕訳、決算整理事項などを素早く処理しなければなりません。
問題集も合わせて活用することによって本試験で通用するレベルまで実力を高めることができ、あなたを合格まで導いてくれるでしょう。
スッキリわかる 日商簿記2級
基本情報
- 出版社:TAC出版
- ページ数:商業簿記676ページ・工業簿記468ページ
テキストの特徴
- 売上No1の人気書籍
- ポップなイラストが魅力的
売上No1の人気書籍
本書は年間売上第1位を何度も獲得している非常に人気の高い書籍です。
テキストと問題集が1冊にまとまっており、短期間で簿記2級に合格するために要点を絞って解説されています。簡潔で分かりやすく、イラストや図表をふんだんに使用した本書では、ストーリー性を持たせた読み物のように全体を把握することができます。
覚えたらすぐに解くことを重視しており、しっかりと着実に合格に近づくように設計されています。例題に用いられている数字も「50」や「100」といった単純なものを使い、コンパクトなテキストでどこでも学習ができるように考えられています。
「簿記2級では何を学ぶのか?」「簿記2級に合格するとどうなるのか?」といったことから解説しているスタートアップ講義を特設ページも設けてあるため、簿記初心者にも安心の一冊となっています。
ポップなイラストが魅力的
この書籍ではネコキャラの「ゴエモン」などさまざまなキャラクターが登場し、実際に会社で起こっている事例などを紹介しながら一つひとつ解説してくれます。
スッキリわかるシリーズではおなじみのネコキャラが本書にも登場しており、「統一試験とネット試験はどう違うの?」といった基本的なことから本試験レベルの内容までかわいく説明してくれます。
ネット試験に対応した模擬試験プログラムも付属しており、本試験と同じ感覚・同じ制限時間で問題を解くことができます。模擬試験には解き方の講義もついており、独学でも不安を感じることなく学習を進めることができるでしょう。
しっかりと要点が整理され、頻出論点を重点的に解説している本書は短期合格を目指す人におすすめの一冊と言えるでしょう。
パブロフ流でみんな合格 日商簿記2級 テキスト&問題集
基本情報
- 出版社:翔泳社
- ページ数:商業簿記472ページ・工業簿記384ページ
テキストの特徴
- 漫画でイメージを掴める
- Youtubeで解説動画を公開
漫画でイメージを掴める
本書では各所に4コマ漫画が描かれており、新しい分野を勉強する際にイメージを掴んでから内容に入り込むことができます。
この書籍ではシリーズを通してパブロフくんというキャラクターがイラストや図解などで分かりやすく解説してくれます。簿記2級の試験範囲の中でも難関である連結会計・清算表・財務諸表なども一つひとつ丁寧に解説しており、初めて学習する人が苦手となりやすいポイントもしっかり押さえています。
パブロフくんも最初は簿記の初心者ですが、学習を進めていくとともに成長していき、最後には経営者になるというストーリーになっているところも本書の魅力の一つでもあります。
公認会計士として実際に活躍している方が著者であり、漫画による分かりやすさと充実した内容の両方を兼ね備えた書籍となっています。
Youtubeで解説動画を公開
パブロフ流シリーズでは各練習問題を実際に著者が解いている動画をYoutubeに公開しています。
著者のよせだあつこ氏による練習問題の解き方や重要論点の解説動画がYoutubeにUPされており、実際に電卓で計算しているところなどを見て問題を解く順番などを確認することができます。
「問題は解けるけど時間が足りない」「この問題はどのような順序で解くと素早く回答できるかわからない」といった書籍では解説しにくい部分であっても動画を見ることによって確かめることができます。
本試験形式の実践問題も6回分ダウンロードすることができ、本試験対策もばっちりです。
公認会計士による分かりやすい解説が動画で確認できるのは独学で勉強する皆さんにとって心強いメリットとなるでしょう。
テキストの選び方
選び方のポイント
- 専門用語も分かりやすく解説しているか
- 自分に合っているか
- 演習問題の量は十分か
- 最新の試験範囲に対応しているか
専門用語も分かりやすく解説しているか
簿記2級は簿記3級から一気に試験範囲が広がり、新しい勘定科目、新しい分野がの問題が出題されます。
経理などで実務経験を積んでいる人や他の会計系資格を有している人であればすぐに意味を理解できるかもしれませんが、学生の方や新社会人の方であれば連結会計や有価証券など馴染みのない用語に戸惑うことがあるかもしれません。
あまり丁寧に解説していないテキストや問題集であれば「なんとなく」で理解してしまい、本試験で得点することができても実務に結び付かずに「使えない知識」になってしまうおそれがあります。
これから簿記2級を活かしていきたいと考えている人であればなおさら基礎をおろそかにしてはいけません。
イラストや図解でしっかり解説しているかどうか、全体像をしっかり掴んでから学習できるかということを意識して選びましょう。
自分に合っているか
簿記2級の勉強を始める際「短期間で合格したい!」ということを意識しがちですが、一度立ち止まって簿記2級を合格した後のことをイメージしてみましょう。
簿記2級を取得する目的はさまざまだと思いますが、せっかく合格しても獲得した知識や理論を上手く使えず、「あの人仕訳や会計処理は出来るけど、その結果財務諸表にどのような影響を及ぼしているか理解していないね…」と思われたら本末転倒です。
そこで、目的に合わせて勉強方法を変えることをおすすめします。
- 最短合格を目指す→頻出項目や要点をまとめたテキスト
- 実務で簿記の知識を使う予定がある→網羅的でしっかり理解を深められるテキスト
「◯月までに合格しないと就職活動でアピールできない!」「昇格審査が◯月にあるからそれまでに簿記2級を取得したい!」という方は短期間で合格するために頻出論点などを重点的に解説したテキスト・問題集をおすすめします。
もしあなたが「簿記の知識を仕事に活かしたい!」「会社から勉強するように言われた!」という方であれば簿記2級の勉強で得た知識を活用する可能性が高いため、網羅的で充実したテキスト・問題集を購入することをおすすめします。
まずは「何のために簿記2級の合格を目指すのか?」という点をしっかり考えてみましょう。
演習問題の量は十分か
簿記2級は簿記3級よりも素早く的確に回答するスピードが問われます。
簿記2級では連結会計・清算表・財務諸表といった総合的な知識が問われやすく、ある程度出題される項目が決まっている反面、素早く的確に回答にたどり着くことが要求されます。
多くのテキストには別冊で問題集が用意されていますが、1周した後に過去問を解いてみると「あれ?時間がかなり足りない…」ということに気づくでしょう。
テキスト・問題集・過去問題集を揃えるとかなりの金額になりますが、不合格になってしまったら元も子もありません。
しっかりケチらずに書籍は買い揃えるようにしましょう。
最新の試験範囲に対応しているか
簿記検定の試験範囲は毎年のように改訂されるため、常に最新のテキスト・問題集を購入するようにしましょう。
2017年の改訂によって連結会計が簿記2級の試験範囲に含まれることが発表され大きな話題となりました。このほかにも簿記検定の試験範囲は定期的に改訂され、常に実務で使える知識を意識した試験問題が作成されます。
新しく試験範囲に含められる問題も毎回数問出題される傾向にあるため、最新の試験範囲に対応していないテキスト・問題集を購入してしまうとその時点で何点か落としてしまう事態になりかねません。
テキスト・問題集は試験範囲が改訂されるたびに新しく販売されるため、常に最新のテキスト・問題集をチェックするようにしましょう。
まとめ
日商簿記2級は最も企業に求められる資格として有名です。
数々のメディアや雑誌などで取り上げられることも多く毎年非常に多くの合格者を輩出していますが、合格率は20%前後であり決して簡単な資格試験ではありません。
しかし、日商簿記2級に合格すると就職・転職・昇格・昇進など非常に多くの場面で活躍することになるでしょう。
しっかりテキストと問題集を周回し、過去問題集や予想問題集で本試験に備えることができれば合格はもうすぐそこです。
本記事のまとめ
- テキストには重要論点収録しているものや網羅的なものなどさまざま
- どのテキストが合っているかは人それぞれ
- 簿記2級を何のために取得するか考えてみよう
皆さんが合格することをお祈りしています。