簿記・会計

簿記1級合格者が熱く語る、簿記が楽しい!面白い!と思える瞬間

「簿記を勉強していて楽しいと思う瞬間はいつなの?」

「簿記の勉強をしていて面白いと感じる時はどういうとき?」

このような疑問は簿記を勉強していれば誰しも感じていると思います。

簿記が楽しい・面白いと感じるようになるには、簿記の基礎を理解し、会社の実務や経済ニュースと結びついてから訪れる傾向にあります。

筆者である私自身も日商簿記1級を取得するまで2年間ほど勉強してきましたが、「これは面白い!・楽しい!」と感じる場面は何度もありました。

今回は私の実体験などをご紹介したながら、簿記が楽しい・面白いと感じる場面を解説していきます。

本記事の筆者(シズ)

  • 日商簿記1級を所持、資格の大原主催の簿記大会にて全国優勝
  • 社会人として経理職・経営企画職を経験

本記事の内容

  • 簿記が楽しい・面白いと感じる場面
  • 仕事上で楽しい・面白いと感じる場面
  • 簿記つまらないと感じる理由

簿記が楽しい・面白いと感じる場面

簿記が楽しい・面白いと感じる時

  1. 試算表や財務諸表の合計が一致した時
  2. 経済ニュースなどを理解できた時
  3. 就活時に会社を分析できた時

皆さんが簿記を勉強する際には「よし、簿記検定を取ろう!」と決断した時が大半だと思います。

しかし、最初は独特な計算や聞いたことがない用語、「備品減価償却累計額」などの長い勘定科目を目の当たりにし、「簿記って面白くないな…」と感じたかもしれません。

簿記が楽しい・面白いと感じるまでは簿記3級レベルの基礎知識をある程度身につける必要があります。

簿記の基礎知識を身につけた後、どのような場面で簿記が楽しい・面白いと感じるのかひとつずつ見ていきましょう。

試算表や財務諸表の合計が一致した時

簿記を勉強していると財務諸表や試算表、精算表などが出てきます。

これらは会社の決算時に作成される表であり、簿記検定においてはこれらの表を作成する問題が総合問題のように出題されます。

総合問題である以上、これまで勉強してきた知識を全て活用して解く必要がありますが、最初はなかなか合計が一致せず、苦い思いを何度も経験するでしょう。

しかし、ここで諦めずに何度も問題を解くことによって、ある時一発で合計が一致する時が来ます。

その時はこれまでの苦い経験が糧となり、爽快感のような感覚が一気に襲ってきます。

このレベルまで到達すると点数も大きく伸びるタイミングと重なるため、「簿記って面白いんだな」と感じることがあります。

経済ニュースなどを理解できた時

最初に一つ事例をご紹介します。

A社は貸倒引当金の不計上・のれんの減損損失の不計上により不適切な会計処理を行った、これによって、A社は、過大な当期純利益、純資産等を計上した連結財務諸表を記載した有価証券報告書等を提出した。

※参考:証券取引等監視委員会事務局 開示検査事例集

※一部文言を変えております

このニュースを見た時、簿記の知識がないと…

「貸倒引当金ってなんだろう?」

「のれんって居酒屋の入り口とかにあるアレじゃないよね?」

「何か不正行為をして利益を水増ししたんだろうな…」

という印象になるでしょう。

しかし、簿記を勉強していれば

「貸倒引当金の繰入による費用計上をしていなかったのか」

「のれんの減損損失を計上しなかったからその分がそのまま利益として計上されてしまったのか」

「これまでの財務諸表を訂正する訂正報告書を提出する必要があるな」

というように理解できます。

経済ニュースを見ているとこのようなニュースは毎日のように流れており、そのニュースを理解できるようになると世の中でどんなことが起こっているのか少しづつ見えるようになるでしょう。

この感覚はどうしても勉強してきた人にしか分からない部分ではありますが、毎日のニュースが理解できるようになるといつもとは違った視点でニュースを見ることができるため、興味と共に面白いという感情を抱くでしょう。

就活時に会社を分析できた時

新卒で就活をする際に、必ずと言って良いほど企業分析をすると思います。

まずは会社の公式HPを隅から隅まで見ながら会社の社風や事業内容を確認し、「この会社でいいのかな?」と考えるでしょう。

簿記の知識があると、これに加えて「財務諸表の分析」を行うことが出来ます。

例として日本では知らない人がいない「楽天」の簡単な財務諸表をご紹介しましょう。

勘定科目 2019年度 2020年度 2021年度
売上収益 1,263,932 1,455,538 1,681,757
営業利益 72,745 ▲93,849 ▲194,726
税引き前当期純利益 ▲44,558 ▲151,016 ▲212,630
当期純利益 ▲33,068 ▲115,838 ▲135,826
利益剰余金 413,603 290,449 142,671

※単位:百万円

※参考:楽天グループ株式会社 決算短信 連結損益計算書及び連結包括利益計算書

楽天はグループ企業全体で2万8千人以上も在籍している日本でも有数の大企業であり、楽天市場や楽天モバイルなどで誰しもが目にしたことがあるでしょう。

しかし、この楽天グループは毎年大赤字を計上しており、ここ3年間の推移を見ると、赤字の金額はさらに拡大していっています。

これまで積み上げてきた利益剰余金も2022年度に消失する可能性があり、内情は苦しい経営となっているでしょう。

この原因を分析していくと楽天モバイルの事業に関連していることが分かり、「これからこの事業は撤退するのかな?それとも縮小するのかな?、いずれにしてもこの事業に関わると変革に巻き込まれそうだなぁ」という背景が透けて見えてきます。

楽天モバイルは2022年8月を最後に「料金0円プラン」を終了しました、この背景にはおそらくこれまでの大幅赤字と利益剰余金の消失が関連しているでしょう。

また、「黒字倒産」する企業も最近増えてきており、この視点でも「本当に優良な企業」というものを見つけ出すことが出来ます。

財務諸表の数字は嘘をつけません。(たまに嘘の数字を発表してニュースになりますが)

数字を見ていると「この会社はかなり安定した収益源があり、参入障壁も高く、この会社に入社すればかなり安泰なのではないか?」という会社がちらほら現れるようになります。

上場企業でなくてもそのような優良企業は意外と多く、そのような企業を見つけること自体が楽しくなってくるでしょう。

どんな会社も当然ながら公式HPでは「自社に都合の良い情報」を強調するように公開していますが、財務諸表は公開すべき数字が法律によって決まっているため、その会社の「実態」が垣間見えます。

仕事上で楽しい・面白いと感じる場面

仕事で楽しい・面白いと感じる時

  1. 会議などで話についていけた時
  2. 会計処理を見て何が起こったか推測できる時
  3. 新しい事業や取引の話でもついていけた時

会議などで話についていけた時

会社に入社すると、新卒の場合は「経験を積むため」と称して上司に付いていって様々な話を聞くことになります。

会議などにも「議事録係」として最初は参加する形になるかもしれませんが、話についていけない専門的な話の中でも、簿記の知識があると売上や原価の話、人件費や間接費などの話について行くことが出来ます。

会社によってはその会社・業界特有の「専門用語」が存在しており、これらの専門用語は会社内で勉強して行くことになりますが、簿記の用語は日本で共通の言語です。

中途採用の方でもまずは会社の内部のことを理解してもらうために様々な情報を収集しにいくと思います。

その場合でも簿記や会計の用語は共通言語として機能しているため、ものごとを理解する入り口として機能するでしょう。

筆者である私も何度か転職の経験があり、簿記の知識を持っていることによって助けられたことがあります。

会議やちょっとした打ち合わせでも会社にどのような影響を与えるかという面を念頭に置いておくと、「良く理解しているね」「そういう面もあるのか」という言葉をもらえることもあります。

そのような言葉をもらえた時には仕事のモチベーションアップにもつながり、少しでも「仕事が楽しい」と感じるのではないでしょうか。

会計処理を見て何が起こったか推測できる時

簿記の知識を持っていると、会計処理や仕訳などを見てある程度「何が起こったのか」ということを推測できるようになります。

会社では仕事をしていても「なぜこの仕事をしているのだろうか?」と感じることが多々あります。

時には「上司は〇〇と言っているけど本当なのだろうか?」と感じることもあるでしょう。

このような時にはその仕事に関連する伝票や仕訳を会計システムなどで参照すると、背景が透けて見えてきます。

これは基本的に「お金の流れは嘘をつかない」という性質にも関連しています。

簿記の知識を持っていると、仕事の全体像をある程度把握でき、「自分の仕事はこの部分を担当しているんだな」という意識を持つことが出来ます。

この点は将来会社で重要なポストに就く可能性がある人ほど重要なスキルです。

このような会社を俯瞰して見ることができるスキルを持っていると、徐々に仕事の面白さや楽しさに気づくことが出来、仕事の本質が見えてきます。

上司や同僚との打ち合わせでも本質をついた議論や質問をすることが出来、頼られる存在になりやすいと言えます。

会社が利益を追求する以上、会計に詳しい人材は重宝され、徐々に評価されてきます。

「なんのためにこの仕事をしているんだろう?」と思うより、「この部分を担当しているんだな」と思いながら仕事をする方が面白いと感じるのは当然と言えますね。

新しい事業や取引でも話についていけた時

仕事を何年か経験し一人前になると、新しい事業や新しい取引について相談されるようになります。

新しいものごとについては最初は全員手探りで行うことが常であり、きっかけは「お客さんからこういうことは出来ないか?と言われた」「今の事業に関連して、こういう事業も始めてみてはどうか?」ということが多いでしょう。

ここでも簿記・会計の用語が共通言語として機能しているという点が有利に働きます。

「新しい事業を立ち上げるとどのくらい費用がかかるのか」

「この商品を製造するためにはどのくらいのコストがかかるのか」

「この取引はどのような流れで処理すれば良いのか?」

新しいことをやろうとするとかなり多くの課題や調査すべき事項が並び、それら全てを結集して経営層に「それならやってみよう」と言わせるまで突き詰める必要があります。

これだけ聞いても途方もない仕事量だと感じると思います。

新しい領域の話は簿記で勉強した範囲に限定されますが、「これは勉強した範囲だな」と感じる部分もあります。

もちろん、簿記3級よりも2級、2級よりも1級の方が試験範囲が広いため、活用することができる機会が増えます。

もし、簿記で勉強した範囲ならば既にあなたは他の人よりも一歩前に出ています。

全く新しい内容は誰しも及び腰になりがちですが、非常に多くのチャンスが眠っています。

自分の仕事が会社の未来を変えるかもしれない、という感覚を感じながら仕事ができると、楽しく取り組むことができるでしょう。

簿記がつまらないと感じる方へ

簿記がつまらない理由

  • 基礎がまだ身に付いていない
  • 勉強した知識が実務と結びついていない
  • 経済ニュースを見てもピンとこない

基礎がまだ身に付いていない

冒頭でも述べましたが、簿記の基礎が身についていないと「楽しい」「面白い」という感覚を得られにくいと言えます。

基礎知識がないと応用することもできず、新しい発見があってもそのことに興味を覚えることが出来ないからです。

全く分野は違いますが、例として次のことを挙げましょう。

あなたは学校の先生から

「地球は実はわずかに楕円です」

「地球は自転の遠心力によって重力が場所ごとに違います」

ということを聞いたとします。

もしこの事実を知らない場合は

「へ〜、地球って楕円だったのか!」

「重力は場所によって違うのか!」

と感じるでしょう。

しかしこれは「地球は丸い」「地球には重力がある」という基礎知識がないと、「面白い」と感じることが出来ません。

簿記の世界にも同じようなことが言えます。

「貸倒引当金とは取引先の倒産などで債権を回収できなくなることに備えて計上している金額」

「貸倒引当金の金額は計上した期に貸倒引当金繰入として費用計上される」

という基礎知識がないと、

「貸倒引当金の不計上などで過剰に利益を水増しした不正会計が発覚した」

というニュースを正確に理解できません。

これらのようにある程度の基礎知識がないと簿記の楽しさ、面白さという点には気づきにくいと言えるでしょう。

勉強した知識が実務と結びついていない

簿記はどれも実務に結びついており、会社によって活用する分野は異なりますが、全く活用しないという状況はなかなか考えにくいと言えます。

こちらも例を挙げましょう

「減価償却費は費用」

「建物を購入すると減価償却費が発生する」

という基礎知識がない場合は

「この事業をするために建設する工場の費用はどのくらいかな?」

という質問に正確に答えられません。

もし簿記の知識がないと、

「建物は◯億円だから建設した時にその分費用になっちゃうのかな?」

と思ってしまうかもしれません。

もちろんこれは間違いです。

建物は毎期減価償却費として費用計上されるため、購入代金全額がその期に費用計上されません。

このように、実務と結びつけて勉強した知識を応用しないとなかなか仕事に使えるようにならないでしょう。

特に会計システムが発展している現代では単純な仕訳や会計処理などはシステムがある程度アシストしてくれます。

そのため、簿記の知識を使う時は応用力が問われる時の方が多く、

「今年はどのくらいの利益で着地しそうかな」

「5年後売上○億円を目指すためにはどのくらいの資金が必要かな」

「あの会社を買収するとどのような影響が当社にあるのかな」

このような質問は単純な仕訳問題と大きく異なり、様々な事柄を考慮して回答しなければなりません。

逆に言うと、これらの質問に対する回答を用意できるほどの実力をつけると、会社全体の流れや将来を見据える力をつけることが出来、「会計の知識があると面白いな」と思える瞬間が訪れるでしょう。

経済ニュースを見てもピンとこない

ニュース番組やネットニュースなどで毎日のように経済ニュースが流れています。

その中で次のようなニュースを見たことがあるのではないでしょうか。

「〇〇事業を行うA社が今年3月末時点で100億円の債務超過となりました。」

このようなニュースを見た時、簿記の知識がないと

「100億円の債務超過って赤字が100億円になっちゃったのかな?」

「債務超過って債務が多すぎることだから借金ばっかりしちゃったのかな?」

という印象になってしまうかもしれません。

しかし、簿記の知識があると

「会社の負債が増えすぎちゃったんだな」

「資金繰りがうまくいってれば倒産することはないけど、かなり厳しそうだな」

という印象に変わります。

「〇〇業界大手B社が資本金を1億円に大幅減資、〇〇億円を赤字穴埋めに充当」

というニュースを見た際も、ある程度簿記と税務の知識があると

「1億円ということは税法上の中小企業に分類されるから、税金の優遇措置を受けるのが狙いか」

「税金を抑えた分会社に現金が貯まるからそれを元手に改革をするんだろうな」

という印象を持つでしょう。

経済ニュースを理解すれば、「このあとどこにどのような影響がありそうか」ということを推測することもでき、会社での世間話でも少し踏み込んだ話ができるかもしれません。

最初は難しいかもしれませんが、勉強していく過程で徐々に理解できることが増えてきます。

経済ニュースを見ていて「面白い」と感じるためにはある程度の知識量と時間が必要かもしれませんが、業界特有の企業形態などもわかるようになると、面白い発見が出てくるかもしれませんね。

簿記が面白いと感じるには時間がかかる

今回は簿記が楽しい・面白いと感じる場面について、筆者の経験などを交えながら解説しました。

簿記が楽しい・面白いと感じるにはどうしても基礎知識が必要であり、そこを乗り越えると今まで感じられなかった世界が見えるかもしれません。

日本が資本主義社会である以上、お金に関する知識は重要であり、会社でもそれは同じです。

簿記3級は比較的簡単に取ることができるので、そこから始めてみても良いかもしれません。

簿記3級の資格講座は私が調べた限りではスタディングが3,850円と一番安いです。

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本記事のまとめ

  • 簿記が面白いと感じる場面はいろいろある
  • 面白いと感じるまでにはある程度の知識が必要

皆さんが簿記の楽しさ・面白さを体感し、それぞれの分野で活躍することをお祈りしています。

  • この記事を書いた人

ミスズ

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