IT業界で働いている人にとって基本情報技術者試験はとても有名な資格の一つでしょう。
ITで実務経験を積んでいる方々に聞くと、「IT業界は実務経験が問われるから取っても意味ないよ」という人もいれば「基本情報技術者はITスキルを持っている証明になるから良いよ」という人もいます。
今回は基本情報技術者が役立つ場面とあまり役に立たない場面をご紹介します。
本記事の内容
- 基本情報技術者が役立つ仕事とあまり役に立たない仕事を解説
- さまざまなITエンジニアの仕事を解説
基本情報技術者試験とは
基本情報技術者試験とは情報処理技術者試験のレベル2に該当する試験であり、ITに関する基本的な知識や技能が問われるため、浅く広い試験範囲となっていることが特徴です。
国家試験であるこの資格は様々な企業で評価されていますが、残念ながらすべての企業から評価されているわけではありません。
今回はこの資格について、私の経験などを踏まえて解説いたします。
基本情報技術者が役立つ場面
- システムエンジニアやプログラマーなどになりたい方
- 官公庁のシステムを受注している大手企業に転職したい方
- 資格手当や奨励金を支給している企業に入社したい方
- IT未経験でIT企業に転職したい方
システムエンジニアやプログラマーなどになりたい場合
ITエンジニアの中でもシステムエンジニアやプログラマーは基本情報技術者と相性の良い職業であり、基礎的な知識を身に付けることができます。
システムエンジニア(SE)とは顧客の要求に応じてシステムを設計する職業です。
そのため、顧客の要求を整理しながらシステムを設計していき、できるだけ戻りがないように進める流れを頭に入れておかなければなりません。
また、顧客と社内のエンジニアとの橋渡しを行う担当者としての側面もあるため、プログラミング言語を用いてどのようにシステムが出来上がるか分からないと、適切な指示を出すことができません。
幅広い知識が問われるため、会社として基本情報技術者の合格が昇格基準として設定していることも珍しくありません。
とはいいつつもプログラマーからシステムエンジニアになる方が多いため、実務での経験を活かしながら基本情報技術者の試験に挑むことができるでしょう。
一方、プログラマーとはシステムの設計書に基づきプログラミングを行ってシステムを構築していく職業です。
プログラマーは基本的に社内に常駐し、SEがまとめた情報を基にシステムを構築していきます。
使用するプログラミング言語は担当するシステムなどによって変わるため、自分が使用する言語以外に覚えたいものがあれば自分で勉強しなければなりません。
IT企業に就職するとまずはプログラマーから始める場合が多く、新人の内は研修を受けながら業務を行うことになります。
会社によっては情報処理技術者試験の受験を推奨する場合も多く、上司や先輩などから助言されることもあると思います。
基本情報技術者試験はITの基礎知識と選択問題でプログラミングが出題されることから、新入社員の登竜門としてもつかわれる場合があります。
いずれにしても昇進・昇格タイミングで求められる資格である場合が多いため、早めに勉強しておいても無駄にはならないでしょう。
官公庁のシステムを受注している大手企業に転職する場合
官公庁や地方公共団体で情報システムの開発の入札をする場合、その参加申請において情報処理技術者試験や情報処理安全確保支援士の登録人数を記入することが求められることがあります。
これは政府のガイドラインにも記載されており、国の施策として企業は情報処理技術者試験の合格者数を一定以上確保する必要があります。情報処理推進機構が公開しているIT人材白書などを見ると、今後もこの傾向は強くなると考えられ、官公庁や地方公共団体といった所を取引先として抱える企業は情報処理技術者試験の合格者を多数確保しようとします。
そのため、もしこのような会社に入社したいと考えている方はいる場合は、他の候補者よりかなり有利に選考されるでしょう。
昨今では、IT人材の不足も後押ししているため、基本情報技術者試験に合格していればIT業界未経験でも採用される可能性が高いのではないでしょうか。
資格手当や奨励金を支給している企業に入社する場合
情報処理技術者試験は非常に有名な資格であるため、IT業界以外の会社でも資格手当や奨励金を設けている場合があります。さらに情報処理技術者試験は国家試験であるため、他の民間資格よりも手当が高めに設定されている場合があります。
その場合は採用試験や昇進・昇格の選考でも有利に働きやすい傾向にあるため、基本情報技術者レベルの資格を持っている場合は良いことづくめです。
昨今はIT企業でなくてもパソコンを当たり前に使う時代です。
一般企業で基本情報技術者試験に合格している人はあまりいないため、新人であっても重宝されます。(筆者の体験談です)
パソコンをうまく使えるだけで仕事が短時間で終わらせることもできるため、今後は「パソコンに強い=仕事ができる」という等式が成り立つことになるでしょう。
IT初心者がIT企業に転職する場合
IT業界の企業は総じて専門知識や専門技能が問われる業界であるため、実務経験がない人が転職する場合は少しハードルが高い傾向にあります。
昨今ではIT人材の不足から各企業も積極的に採用して教育していく方針をとっていることもありますが、やはり未経験だと採用選考の時点で他の候補者よりも評価が低くなってしまいます。
しかし、基本情報技術者試験に合格していれば例え未経験でも「一定以上の知識を有している」という評価になりやすいです。
ちなみにITパスポート試験は開発者側の知識ではなく使用者側の知識が多く問われるため、IT企業の選考試験ではあまり評価されない傾向にあります。
基本情報技術者試験以上のレベル(応用情報技術者など)については全て開発者側の知識が問われる試験であるため、目指すのであれば基本情報技術者をまず目標としましょう。
とはいいつつも、応用情報技術者以上の資格はかなり難関の資格になりますので、IT業界で働きながら勉強しても良いのではないでしょうか。
基本情報技術者があまり役立たない場面
- Webエンジニアになりたい方
- 外資系IT企業に入社したい方
- 資格よりも実務経験を重視する企業に入社したい方
Webエンジニアになりたい方
もしあなたがWebエンジニアになりたい場合は、基本情報技術者の試験範囲がかなり違う分野であるため、あまり評価されにくい傾向にあります。
WebエンジニアとはWebサイトやECサイトを制作する仕事で、Web上に公開されたシステムの設計・保守・管理をする仕事です。
HTMLやCSS、JavaScriptといったWebサイト制作用(フロントエンド)のプログラム言語を使用してWebサイトを制作していきます。
また、Webサイトの制作だけでなく、サイトに入力されたデータの管理や様々な処理システムの保守・管理などを行う仕事(バックエンド)もあります。
このような仕事を行う場合はLinux・PHP・Perl・Pythonといった言語を使うことになります。
これらの仕事の中で、データやシステムの基礎的知識、Pythonなどの一部のプログラム言語を基本情報技術者で学ぶことはできますが、使用するプログラム言語の移り変わりが激しく、自分で学習していく必要があります。
もし、あなたがWebエンジニアになりたい場合は、Webエンジニアの技術を学ぶことができる専門学校やスクールに通うことをおすすめします。
外資系IT企業に入社したい方
外資系IT企業に入社したい方の場合は基本情報技術者の資格が活かせない場合があります。
外資系IT企業は総じて資格よりも実務経験や熱意を重視する傾向にあり、未経験者には少しハードルが高いことが多いでしょう。
もしあなたが未経験の場合はIT系の日本企業に入社し、経験やスキルを習得した後に転職することをおすすめします。
有名なIT企業(Googleなど)はほとんどが転職者であり、既にある程度のスキルを持っている人が入社しています。
確かに外資系IT企業は日本の大手企業並かそれ以上の給与が提示されていることが多いですが、それ相応の人材が採用されるため、狙う場合は年単位の長期的な計画を立てて少しづつスキルを高めるところから始めましょう。
資格よりも実務経験を重視する企業に入社したい方
上記の外資系IT企業とも通じていますが、日本企業においても資格より実務経験を重視する企業はたくさんあります。
特にベンチャー企業はその傾向が強く、企業側も教育に力を入れて人材を育てるより即戦力を採用してできるだけ早く仕事を前に進めようとします。
また、新卒入社よりもどこかの企業で働いた経験がある人が転職する時の方が実務経験を重視する傾向にあり、IT業界で働いた経験が全くない人が転職する場合は少しハードルがあると思って良いでしょう。
未経験の人がIT企業に転職したい場合は、実務経験を重視していて即戦力を欲している企業よりも、しっかり教育してくれる企業を選ぶようにしましょう。
基本情報技術者を勉強する前に目的を明確にしよう
ここまで記事を読んでいただいたら分かる通り、どの仕事に就きたいか、自分がどのような環境で働いているかによって基本情報技術者が活かされるかどうかが変わります。
そのため、まずはどのような自分になりたいか、その仕事に就くためには本当に基本情報技術者を勉強すべきかを考えるべきです。
どの資格にも言えることかと思いますが、せっかく資格を取っても活用しなければ意味がありません。
自分の人生の中で活かせる資格かどうかをまず考えてみてはいかがでしょうか。