簿記検定とFP(ファイナンシャルプランナー)はどちらも「お金」に関する資格ですが、勉強内容は大きく違います。
本記事ではこの違いに触れつつ、活用場面や難易度などを解説いたします。
本記事の内容
- 簿記とFPの違い・難易度・活用場面
- それぞれ何級を目指すべきか
- どちらを勉強すべきか
本記事の作成者
簿記とFP(ファイナンシャルプランナー)の違い
簿記は「会社」のお金の流れに注目
簿記は会社のお金の流れを中心に勉強します。
会社は年に一回その年の経営成績や年度末の財政状態を表す”財務諸表”というものを作成します。
財務諸表は簡単にいうとその会社の1年間の成績表です。
ポイント
簿記では主に財務諸表や財務諸表の基となる帳簿の作成方法を学びます。
簿記の勉強内容は帳簿に記帳するための仕訳の方法や会計基準・法規制の理解などが中心となります。
簿記検定の中で最も有名な日商簿記検定は年間60万人も受験する非常に知名度の高い検定であり、あなたの社会人の友人や同僚にも持っている人がいるのではないでしょうか。
さらに詳しく
日商簿記検定以外の検定についてはこちらの記事をご覧ください
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簿記を勉強すると財務諸表が理解出来るようになるため、財務諸表から企業を分析する力が身につきます。
就職や転職する際に「あの会社の経営成績や財政状態は大丈夫かな?」という視点で分析することができ、「入社して失敗した!」という事態を避けられるかもしれません。
その他にも資産運用や投資を行っている人がいる場合は、投資先企業を分析することができます。
さらに、簿記の知識では様々な事象や取引がどのように財務諸表に反映され、利益にどのようなインパクトを与えるかを理解出来るため、ビジネスを営む上での「コスト感覚」が身につきます。
「これは売上が増加するが費用も増えるため、利益はほとんど増えないでしょう」「この案が利益を出すには最低○年間運用し続ける必要があるでしょう」といった視点を持つことができます。
簿記を勉強すると
- 企業を分析出来るようになる
- ビジネス上での「コスト感覚」が身につく
- 簿記検定の知名度が高く、一定の評価を得られる
FPは「個人」のお金の流れに注目
FP(ファイナンシャルプランナー)は「個人」のお金の流れを中心に勉強します。
FPは個人の家計やお金の面から将来起こるであろうライフイベントを予想し、目標達成の手助けやお金の悩みの解決などを行います。
独学のコツ
「家計のホームドクター」とも呼ばれ、家計改善・資金計画・資産設計など様々な面から人生設計をサポートします。
FPの試験範囲は下記のとおりです。
- 年金
- 保険
- 資産運用
- 税制
- 住宅ローン
- 相続
- 不動産
この試験範囲から分かるように、「個人」の人生において多くのお金が動く事について知識を習得します。
FPの資格
FPには二つの資格があります。
FP資格の種類
- FP技能士(国家資格)
- AFP・CFP(民間資格)
FP技能士は学科試験と実技試験があり、3級から1級があります。
一方、AFPやCFPはFPとしての知識を習得した後に日本FP協会の研修を受ける必要があります。
さらにAFPとCFPは2年ごとの更新が必要であり、更新の度に継続教育を受ける必要があります。
FPを勉強すると
- 個人に焦点を当てたライフプランを立てられる
- 資産運用や税制などの分野に強くなる
- プライベートでも活かせる知識が身につく
就職・転職に活かせる資格はどっち?
事務や経理で働きたい人は簿記検定
簿記検定は会社のお金の流れを勉強するため、下記のような仕事に役立ちます。
簿記が役立つ仕事
- 一般企業の経理
- 会計事務所の社員
- コンサルタント
- 銀行員
- 投資家
- 起業家
特に簿記を勉強する人で多いのは一般企業の経理で働いている人、もしくは経理に就職・転職したい人です。
会社によっては経理で働く人に簿記検定の取得を奨励している場合もあり、資格手当などが設定されていることもあります。
経理を担当する人は会社を営んでいく上で必ず必要であり、簿記検定を取得すればどの会社でも就職・転職できるチャンスがある人材になることが出来るでしょう。
金融・保険業界で働きたい人はFP
FPは個人のお金の流れを中心に勉強するため、下記のような仕事に役立ちます。
FPが役立つ仕事
- 保険会社の営業・窓口
- 証券会社の営業
- 銀行員
- 不動産関連会社の担当者
- FPとして独立したい人
FPを勉強すると個人の人生で起きるライフイベントに関する知識を蓄えることになります。
それらの知識は銀行員や保険の営業、証券の営業や窓口で役立つ知識であり、個人のポートフォリオや資産運用におけるリスク許容度の設定、必要な保険の選定、個人融資の金額算定など様々な場面で使えます。
ココに注意
どの会社でも活かせるという知識ではないため、勉強をする前にFPをどのように活かすかを考えた方が良いでしょう。
就職や転職で活かす場合はどちらも2級を目指しましょう
ココがポイント
簿記検定もFP技能士も多くの企業で2級以上が評価されます。
簿記検定の3級は簿記の基本的知識が問われるため、勉強を始める際に目指すのはいいですが、実際は中小企業の経理担当者レベルである簿記2級から評価されます。
FP技能士についても3級は金融の基本的知識が問われるため、2級以上が評価の対象となります。
いずれも3級から勉強を初めて2級合格までの道のりは半年以上かかるため、就職や転職の活動時期などを考慮して勉強しましょう。
難易度はどちらの方が高い?
簿記検定の合格率・目安勉強時間・試験回数
級 | 合格率 | 勉強時間 | 試験回数 |
1級 | 10% | 700時間 | 年2回 |
2級 | 20% | 300時間 | 年3回 |
3級 | 50% | 100時間 | 年3回 |
簿記検定の目安勉強時間は3級が100時間、2級が300時間となっており、数ヶ月〜半年程度で合格することが可能です。
また、簿記検定は専門用語が多く、勉強を始めた当初は少しハードルが高い印象を抱くと思います。
減価償却費・繰延税金資産・貢献利益など、経理を経験している人にとっては馴染みのある用語かと思いますが、初めて勉強する人はまずどの用語が何を示しているかを覚えなければなりません。
これらの用語はどの会社でも使われているため、実務に直結する知識となります。
また、簿記検定は受験資格がなく、3級を飛ばして2級を勉強することも可能です。
簿記1級については公認会計士や税理士の「登竜門」と呼ばれており、非常に難易度が高い試験です。
年単位の勉強時間が必要となる場合もあるため、会計の専門家として働く道を選択する場合は簿記1級の合格を目指しましょう。
今後仕事で簿記検定を使う場合は体系的に勉強した方が良いため、簿記学校などに通うことをおすすめいたします。
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簿記学校や通信講座について知りたい方はこちらの記事をご覧ください
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FP技能士の合格率・目安勉強時間・試験回数
級 | 学科試験合格率 | 実技試験合格率 | 目安勉強時間 | 試験回数 |
1級 | 約10% | 約80% | 600時間 | 年3回 |
2級 | 約30% | 約45% | 200時間 | 年3回 |
3級 | 約70% | 約70% | 100時間 | 年3回 |
試験は学科試験と実技試験があり、二つ合格することによってFP技能士となります。
FP技能士の勉強目安時間は3級で100時間、2級で200時間となっており、数ヶ月〜半年程度で合格することができます。
試験内容は日常生活でも耳にする用語が多く、健康保険・課税所得・確定申告といった内容が問われます。
そのため、勉強を始める際のハードルはそこまで高くない試験です。
FP技能士1級については非常に難易度が高く、1年以上の勉強期間となる可能性があります。
AFPを目指す場合はFP技能士2級合格後にAFP認定研修などを受ける必要があります。
AFPやCFPは日本FP協会の会員となるため、顧客からの信頼を獲得しやすい資格です。
FPとして独立して仕事をしていく場合はAFPやCFPを目指しましょう。
目標が決まっていない場合は簿記検定を勉強しよう
就職・転職を目指す会社や業界が決まっている人については、どのような業界・職種かによってどちらを勉強すべきか解説いたしました。
しかし、
という人もいると思います。
その場合は、まず簿記検定の勉強をすることをおすすめいたします。
簿記検定をおすすめする理由
- 応募条件に設定している求人情報が多い
- 知名度が高い
- どの会社でも経理担当者が必要
就職サイトのリクナビで検索した結果、「簿記」を含む求人数が980件、「FP」を含む求人情報が680件となり、簿記の方が求人情報に記載されている場合が多いことが分かりました。
もちろんこの求人は全て応募条件に設定している企業ではないですが、多くの企業が簿記検定に関心を抱いていると言えるでしょう。
また、毎年60万人も受験している簿記検定は非常に知名度が高く、どの企業でも一定の評価は得られるでしょう。
さらに、どの企業でも経理の担当者は必要であるため、就職・転職のチャンスが大幅に広がります。
学生の方は進学時の評価にも繋がるため、簿記検定をとっておいて損はないでしょう。
本記事のポイント
- 事務・経理は簿記、金融・保険業界はFP
- 簿記は「会社」、FPは「個人」のお金の流れを勉強する
- 会社で評価されるのはどちらも2級以上