さまざまなニュースでIT人材が不足していると叫ばれていますが、どのようなデータを根拠にしているのでしょうか。
今回経済産業省と情報処理推進機構からの情報をもとに解説いたします。
IT人材とは?
さまざまなニュースやWebサイトで「IT人材が不足している」という表現を見ることがありますが、そもそもIT人材とは何でしょうか。
各種のサイトを調査するとIT人材に明確な定義はなく、一部ではITのシステムなどを利用しているユーザーも含まれるというものも存在していたため、経済産業省の「IT人材需給に関する調査」で定義されている「従来型IT人材」と「先端IT人材」を参考にしたいと思います。
先端IT人材とはAI・ビッグデータ・Iot等の第4次産業革命に対応したビジネスの担い手の人材を指し、これからさらに需要が拡大していくと予想される分野に適した人材です。
対して、従来型IT人材とは従来からのIT需要に対応する人材を指し、現在でもIT人材の大部分を占めます。
経済産業省の調査ではこの二つの人材をIT人材とし、このIT人材が不足している、もしくは不足すると予想しています。
この不足している、もしくはこれからますます不足するという根拠になるデータを解説いたします。
IT人材が不足しているという根拠
今回の記事では経済産業省の「IT人材需給に関する調査」及び情報処理推進機構「IT人材白書2020」を参考に解説いたします。
経済産業省が公開している「IT人材需給に関する調査」は経済産業省が委託したみずほ情報総研が調査したもので、2019年3月に公開された情報を使用しています。
情報処理推進機構の「IT人材白書2020」は毎年情報処理推進機構が公式サイトに公開しているもので前年度の調査結果に基づいて作成されています。
経済産業省の「IT人材需給に関する調査」
経済産業省の「IT人材需給に関する調査」ではIT市場の伸びを様々な調査に基づき3つのシナリオで予想し、供給は文部科学省の「学校基本調査」と国勢調査に基づき予想しています。
労働生産性の上昇率は2010年代の情報通信業の上昇率0.7%を基準に算定しています。
この試算によると3つのシナリオすべてでIT人材が不足する予想となり、低位(需要の伸び1%)のシナリオであっても2030年時点で16万人の不足となります。
また、既に2018年時点で22万人不足している状況ですが、中位のシナリオ(需要の伸び5~2%)・高位のシナリオ(需要の伸び9~3%)ではさらに人材が不足する予想となっています。
さらに上記の表のとおり情報通信業の労働生産性上昇率も日本は低く推移しており、これがさらなる人材不足の状況を生み出していると考えられます。
この労働生産性の上昇率の情報は2010年代の情報で少し古いですが、日本がほかの先進国と比べて低く推移しているのはニュース等で見たり聞いたりしたことがあるのではないでしょうか。
IT人材の供給については上記の表のとおりの予想となっております。
この表のとおり、IT人材の供給は年々増加しており、その傾向はしばらく続くという予想になっています。
また、直近までは平均年齢が上昇傾向になっていますが、今後若い世代がIT関連業界に就職することが予想されるため、今後平均年齢は下降傾向になります。
さらに今回の調査ではIT人材を先端IT人材と従来型IT人材に分類して需給を調査しており、その結果は下記の表のとおりです。
この表での「Reスキル率」とは従来型IT人材から先端IT人材へ変わることを示し、先端IT人材の需給については多くの場合、数十万人の不足が予想されます。
従来型IT人材については需要の縮小の影響もありますが、各シナリオによってばらつきがある状態です。
これらのデータが示す通り、現在IT人材は不足しており、さまざまなシナリオを検討したところ今後も不足する予想が高いということが示されています。
AI人材について
IT人材需給に関する調査では先端IT人材の内AIに関する研究・開発を行っている「AI人材」の需給について別枠で調査・集計を行っています。
AI人材の供給数は年々増加する予想であり、主な増加要因は企業内でのAIエンジニアやAIプランナーの育成によるものと予想されています。
AI人材の需要については各市場調査にを参考に平均(需要の伸び16.1%)と低位(需要の伸び10.3%)の二つのシナリオで予想しています。
おそらくこれを見た方は「需要の伸びが急速だなぁ」という印象を抱くと思いますが、AI市場はそれほど急速に伸びている市場であり、ゆえに各企業や学校が教育・育成に力を入れている分野でもあります。
このAI市場の需給について、2018年時点では3.4万人の不足であり、労働生産性の上昇を加味した2030年予想では平均のシナリオで14.5万人、低位のシナリオで2.4万人となります。
いずれもAI人材が現在から2030年まで不足する予想となっており、供給と労働生産性の伸びが需要に追い付いていない状況が浮き彫りとなる結果となりました。
情報処理推進機構の「IT人材白書2020」について
情報処理推進機構は毎年IT企業やユーザー企業、各業界団体にアンケートを実施しており、その結果を公式HP上に公開しています。
情報処理推進機構の調査は人材の「量」と「質」に焦点を当てて行っており、実際のアンケート回答者が感じている過不足感を集計しています。
ユーザー企業のアンケート結果としては「量」「質」共に不足感を感じている所が多く、その傾向は年々強くなっているというのが現状です。
特に大幅に不足していると感じているという回答の割合が増加してきており、徐々に深刻な状況になっていっていることが伺えます。
IT企業では「量」「質」共に調査年度でばらつきがあり、直近3年間では大幅に不足していると回答している人が30%前後という結果になっています。
日本ではIT人材の多くがIT企業で仕事しており、ユーザー企業にはあまりIT人材が流入していないというデータもあるため、このような調査結果となるのではないかと考えられます。
また、IT企業では自社の従業員のスキルの把握の為に自社独自の基準、もしくは情報処理技術者試験の合格状況を取り入れている企業が多くみられます。
ITスキルと一言で言っても非常に多岐にわたる技術があるため、一様に測定することは難しいのが現状です。
そのため、情報処理技術者試験などの各種資格を活用している企業が多くみられます。
IT人材が不足している状況は続いている
上段で述べた内容のとおり、現時点で既にIT人材が非常に不足しており、今後の需要拡大によってさらに不足していくことが考えられます。
特にAI・ビックデータ・Iotなどの分野については今後急速に需要が拡大していく予想であり、その分野に関する知識・経験・技術を有している人は就職先に困ることはないでしょう。
また、最近のニュースではAIなどの分野の知識を有している人材に破格の給与を提示している企業も出てきています。
特に海外では数億円単位の給与を提示している企業も出てきており、人材の奪い合いが発生しています。
IT人材が不足している今がねらい目
AIなどの研究・開発を行っている先端IT人材のみならずIT業界全体の人材が今不足しています。
しかし、IT業界へ就職・転職しようとすると未経験だとどうしてもハードルが高く、なかなかスムーズにいく場合は少ないのが現状です。
ITエンジニアなどの職種に就職・転職したい場合は基本情報技術者などの資格を有していると面接官の印象が良く、「ITエンジニアとしての基本的な知識は持っているな」という印象を与えることができます。
基本情報技術者試験のメリットについては下記の記事にまとめてありますので是非ご覧ください。
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